アジアン・プリンス
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「とにかく、そんな馬鹿げたゲームはすぐに止めなさい。男ってどれだけ真面目に誠実そうに見えても、愛が無くてもセックスできる生き物なの。とくに、1度関係した女とはね。……何年、何10年経っても、好きにできると思っているのよ」


アンナの声は酷く沈み、聞き取れないほど小さくなっていく。

ティナがアンナの顔を見たとき、その表情は虚ろになり目は潤んでいた


「アンナ? どうしたの?」

「……いえ、何でも」

「ねぇアンナ、正直に言って。ひょっとしてレイのこと」



――国内の公式行事は、3歳年上のアンナがレイのパートナーを務めてきた。


それは最初にアンナの存在を知ったとき、ティナの胸を過った思いだった。


優秀な外科医で、レディの称号を持つアンナが結婚もせずにここまで来たのは、ひょっとしたらレイと愛し合っているのかも知れない。


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