アジアン・プリンス
従姉弟のふたりは禁じられた関係ではない。婚約者のことさえどうにかすれば、結婚だって可能なのだ。

スレンダーで異国情緒漂う美しいアンナを見たとき、そして、彼女の性格が容姿以上に洗練されていて素敵な女性だと知ったとき――。

決して敵わないと思ったのをティナは覚えている。


ティナが深刻そうに尋ねた瞬間、アンナは弾かれたように笑った。


「私が? レイと? あり得ないわ。私は年下なんて大嫌い! それも、融通の利かない堅物なんて最っ低よ!」

「いやだ、アンナ。それじゃ、年下で融通の利かない堅物の男性と何かあったみたいだわ」

「ば、馬鹿言わないで! 私は一生アジュール島に住んで、医者として生きて行くのよ。恋愛には興味がないし、華やかな世界もたくさん。これまで、他に適当な人間がいなかったから、レイの相手を務めて来たけれど…お妃さまを貰ったんですもの。あとは全部お任せするわ」


そのためにも、1日も早くちゃんとした夫婦になりなさい。――島でまた会いましょう。

そう言ってアンナはアジュール島に戻って行ったのだった。


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