アジアン・プリンス

(6)情熱の行方

そして、レイが口にした名前にティナは言葉を失った。


「第14代アズウォルド国王ソウ・ジャック・ルーカス・アズル――私の父だ」


エリザベスはこともあろうに、シン王子と同時期にソウ国王とも性的関係にあったのだ。

それだけではない。シン王子の子供でないと結果が出たとき、彼女はおとなしく引き下がった。それは、国王や王子以外にも、子供の父親に心当たりがあるという証拠だ。


これにはエリザベスの父も仰天した。

12年前、彼は12代国王の庶子に過ぎなかった。だが今は王子の身分だ。王位継承権こそ第10位だが、王族の長老に相応しい尊敬と信頼を集めるべく懸命に努力している。

それが、娘が父親の従兄にあたるソウ国王と不倫関係にあったなど、とんでもないスキャンダルだろう。


あのとき、シン王子の子供であればエリザベスは王妃となれる可能性があった。

だが、ソウ国王の子供であった場合、彼女には何のメリットもない。裕福なアメリカ人男性の妻となるほうが、よほど魅力的に思えたはずだ。


そして今回の王室法改正である。

それは彼女に思わぬ幸運を与えることになった。息子がソウ国王の庶子として認められれば、彼はアーロン王子となる。ソーヤに次いで王位継承権第2位。


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