アジアン・プリンス
かつてのアズル王室と違い、今の王室は恐ろしく豊かだ。

レイの海底油田発掘と観光事業活性化の賜物だが……その恩恵に与るチャンスをみすみす棒に振る女性ではなかった。


「12年前、我が国の研究機関は先進諸国に比べ著しく遅れていた。分子生物学もそうだ。鑑定の際、幾つかのDNA構造が一致したらしい。だが、親子の可能性はなかったため、報告はされなかった」


あえて聞かずともわかるくらい、レイの声は沈み切っていた。


「結果は……とても残念なことだったのね」

「父上は母や私には不実な人間だった。だが、チカコに対しては誠実であった、と……それだけは信頼していた。それが――」


レイは自身のDNAを提供し、兄弟の鑑定を行ったという。

念のため、シン王子とも再度親子鑑定を行った。その結果、アーロンは間違いなく彼らの兄弟と判定されたのだ。


「そのことをチカコやソーヤには話したの?」

「まさか。言えるはずがない。チカコは激怒するだろうし、ソーヤも……傷つく」


そのとき、ティナはレイの頭を抱き寄せた。


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