アジアン・プリンス
ティナの体から布地を全部奪い取り、バングルを嵌めた右手首を掴んで仰向けに押し倒す。その、レイの右手首にもバングルが嵌っている。


結婚までの約1ヶ月で、レイは自分と同じバングルを注文した。もちろん同じ職人に依頼し、ティナの手首にピッタリの品だ。


「窓が……開いたままよ」

「そうだね。風が心地良い」

「閉めなくて、平気かしら? 覗かれない?」

「大丈夫、誰も居ない。それに、私は気にならない。今は……今だけは、君のことしか考えられないんだ。優しくできなくても、どうか許してくれ」


“愛を交わすため”に、女性の肌に触れることはレイも初めてだ。


ソーヤはレイを金髪好きと言ったが、あながちハズレではない。

幼いころから追い求めたのは、金髪の母の後姿だった。満たされない思いが同じ色の髪を持つ女性へと向かわせたのかも知れない。


だが、ティナと出会い……レイの胸に映る金色の髪の持ち主は、クリスティーナただひとりとなった。


シーツに広がる金糸のような髪を手ですくい、髪の先からつま先まで、ティナの全身に唇を這わしていく。


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