アジアン・プリンス
「では、それは間違いだった、とお考えですか?」

「そう言う者もいる。だが、私はそうは思わない。彼らが、自らの誇りを捨てて、子孫へと命を繋いだのだ。彼らの気高い自己犠牲がなければ、アズウォルドは、過去の歴史にその名を留めるになったであろう」


ティナは、彼がアメリカや日本を恨んでいるのではないか、と思いかけたが、すぐに心の中でそれを否定した。

皇太子の表情は穏やかで、その言葉にマイナスの感情などまるでなかったからだ。


「私も、そうありたい、と思っている。祖先から受け継いだものを、より良い形にして、子孫へと繋いで行く。そのためなら、どんな犠牲も厭わない。あの、アズル・ブルーの海を血で汚さないためなら、私はなんでもする」

「アズル・ブルー?」

「太平洋で最も深く美しい青だ。アズル王室の守護石でもある“アズライト”という鉱石がその名の由来だ。我が国の名にもなっている」

「す、すみません。不勉強で……」


身を縮めて恐縮するティナの前に、皇太子は右手首を差し出す。そこにあったのは青紫に近い濃紺で彩られたバングルだった。

ティナは思わず、惹き込まれそうになる。

それは、彼女の心を捕えたブルー。


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