アジアン・プリンス
見渡せば、ほとんどがエコロジーの認定を受けた車ばかりだ。当然のように日本車が多い。そして、街を走り出すとニューヨークで見かけるガソリンスタンドが少ないことに気がついた。

海底油田を発掘して、それこそ売るほどあるはずなのに……そんなティナの疑問にレイはわかりやすく答えてくれた。


「すべては自然の恵みだ。未来の人々に荒廃した地球ではなく、緑の地球を残したい。必要な搾取はするが、無駄と贅沢は慎むよう、国民にも協力を仰いでいる」


レイは運転手に指示してティナ側の窓を開けさせる。

すると、ティナに覆いかぶさるように身を乗り出してきた。


「ほら、見てごらん」ティナの鼓膜にレイの声が響いた。

――ほとんどのビルにソーラーシステムが採用されていて、雨季のスコールすら発電に利用していると説明してくれた……が。


レイはティナに体を寄せても決して触れることはなかった。でも、この距離は反則だろう。

王妃にと望まれながら、少しでも長くレイの傍にいたくてこの国に来てしまったのだ。そんなティナにとって、近づき過ぎるのは危険きわまりない。


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