アジアン・プリンス
独立国として国連に加盟した1960年以降、レイの祖父にあたる先々代の国王が観光政策を進めた。
しかし、その観光客の多くが買春目的。そして、世界中のタブロイド紙に大きく書かれた不名誉な名が『アズウォルド売春王国』と言うものだった。
「でも……それは20年以上前のことだと書いてあったように思いますけど」
「そうだ」
「だったら、あなた自身がそんな蔑称を口にしちゃいけないわ。それは、自らを貶めるようなものです!」
「だが、事実だ」
感情的になって叫ぶティナとは違って、レイは冷ややかな口調だ。
「そんな……事実が真実とは限らないわ! 面白おかしく書かれただけよ。彼らは国を守るために自らを犠牲にしたんだと、そう言ったじゃない!」
「ティナ。いいかい、見たくないものに目を瞑っても、それは消えたりしない。見ようが見まいが、そこにあるんだ。私は聖人ではないし、完璧な人間でもない。必要とあれば嘘もつく。だが、目を瞑って逃げ出したりはしない。大事なものまで見失いたくはないからね」
「わからないわ。あなたが何を言ってるのか……」
ティナはレイから視線を逸らした。
そして、精一杯の強がりで横を向き、口をきつく閉じたのだった。
しかし、その観光客の多くが買春目的。そして、世界中のタブロイド紙に大きく書かれた不名誉な名が『アズウォルド売春王国』と言うものだった。
「でも……それは20年以上前のことだと書いてあったように思いますけど」
「そうだ」
「だったら、あなた自身がそんな蔑称を口にしちゃいけないわ。それは、自らを貶めるようなものです!」
「だが、事実だ」
感情的になって叫ぶティナとは違って、レイは冷ややかな口調だ。
「そんな……事実が真実とは限らないわ! 面白おかしく書かれただけよ。彼らは国を守るために自らを犠牲にしたんだと、そう言ったじゃない!」
「ティナ。いいかい、見たくないものに目を瞑っても、それは消えたりしない。見ようが見まいが、そこにあるんだ。私は聖人ではないし、完璧な人間でもない。必要とあれば嘘もつく。だが、目を瞑って逃げ出したりはしない。大事なものまで見失いたくはないからね」
「わからないわ。あなたが何を言ってるのか……」
ティナはレイから視線を逸らした。
そして、精一杯の強がりで横を向き、口をきつく閉じたのだった。