アジアン・プリンス
今から8年前、ティナが高校生になった最初の夏――

16歳のクリスティーナはひとりのアメリカ人男性に拉致された。そしてなんと1週間も、その男の自宅アパートに監禁されたのだった。


メイソン家では営利誘拐を考え、様々な策を講じていた。

しかし、全く成果はない。なぜなら、身代金の要求がなかったからだ。男の目的はティナで、彼女を解放するつもりはなかったのである。

ティナが助けられたのは偶然だった。

事件から1週間後、ひとり暮らしの男性宅から女性の泣き声が聞こえると、付近住民が警察に通報。それにより警官がやって来て、ティナは救出された。

それは確かに、少女の心に大きな傷を与えたが……。

問題は、事件そのものではなかったのである。


この時、ティナはレイプの被害を受けなかった。

男は拉致したティナを嬉々として裸にし、昼夜を問わず、彼女の全身を撮影したのだ。しかしなぜか、男がティナの肌に触れることはなかった。あとで知ったところによると、そういった性癖の持ち主だったらしい。

救出後、診察を受けた病院でもティナが性的被害に遭ってないことが証明され、家族もホッとする。

そして……ティナの父、ロジス・メイソンは事件そのものを揉み消した。もちろん、娘の将来を思ってのことだ。

しかしそれにより、ティナの悪夢の第2章が始まる。


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