アジアン・プリンス
ティナは、この部屋の賓客とは思えないほど、小さなボストンバックひとつしか持って来ていなかった。

だが、この女官長だけでなく、王宮の職員全員がティナを好意的な笑顔で迎えてくれた。


おそらくは、レイから説明を受けているのだろう。

彼らは人目のない場所でも、決してティナを粗略に扱うことはしない。人間の裏表を知り尽くすティナにとって、それは新鮮な驚きだ。レイからも感じ取れる国民性かもしれない。

彼らの笑顔にティナの心は明るい光で満たされた。それだけでも、この国を訪れてよかった、と思える。


「でも、部屋の中にどうしてこんな……」

「お部屋が天然のマイナスイオンで満たされますし、火災の時は、この水を使った自動消化装置が設置してあります」


各階の廊下の中央には小川が流れているという。

最先端の設備と自然の融和とは、よく言ったものだ。 


室内はすべてがロココ調で統一され、白の中にゴールドがちりばめられた印象だった。

あちこちに置かれたカウチや大小様々なソファは、何人の客を想定しているのだろうか? 

ティナには見当もつかない。


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