アジアン・プリンス
(15)テロの生んだ悲劇
ソーヤの誕生は、祖父と父の関係に修復し難い亀裂を生む。

それをきっかけに、父は皇太子でありながら王宮に住まず、チカコと2男2女とともに、ほとんどをアサギ島か日本で過ごすようになった。


その行動に、ついに祖父は父の廃嫡を議会に提出。その際に、皇太子の長男は正式な婚姻前の懐胎であったことを理由に後継から外し、レイを皇太孫にするつもりで動いた。

国政を蔑ろにしてひとりの女性に骨抜きになった皇太子に、議会や国民が愛想を尽かしていたとしても当然だろう。

また、幼い頃から祖父である国王に厳しい帝王学を叩き込まれ、常に国民と共にある姿勢のレイ王子は人気者だった。

また、王としての資質もレイは別格だ。

成人した後も母の顔色を窺うばかりの異母兄とは比べるべくもない。

議会の承認を得る直前、1993年、祖父は病で倒れ還らぬ人となる。レイが14歳の時だった。


その後、皇太子であった父が即位するが……彼はカトリックを盾に、「チカコとの離婚は無効、よってルビーとの結婚は不成立」と唱えた。

政策もそこそこに、父はチカコを王妃にすることだけに奔走する。

その行動は、海外の公式訪問にチカコを同行するなど、いささか常軌を逸したものだった。


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