アジアン・プリンス
「君は……。どうしたんだい、ティナ。王宮のベッドは寝心地が悪かったのかな?」


それはあり得ない。

天蓋付きの国賓仕様のベッドだ。たとえ、王族であっても、不満を漏らす客はいないはずだ。

世界最高水準のマットレス。この国の気候に配慮した、肌触りの心地よいシルクサテンのシーツ。

腰掛けただけで、ティナにもそれがわかるくらい素晴らしかった。バングルのことがなければ、とっくに夢の中だろう。


「女官長やこちらの皆様からもお聞きしました。祖母上さまのこと。そして、その方からこのバングルをいただいた、と。あの……」

「だから?」

「だから……ご自分の子供や孫に伝えたいって、そう仰ってたんでしょう? それなのに、私なんかに」

「……」

「あの、レイ? ……プリンス・レイ。やっぱりいただけません。それに、あなたを呼び捨てにすることも」


何も答えず、レイはおし黙ったままだ。


どれくらい時間が過ぎたのだろう?

ティナが不意に顔を上げると、レイはベルトのバックルに手を掛け、外し始めた。


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