アジアン・プリンス
その姿は素人のティナにも、静養とか、回復途上とかのレベルではないように見える。


『御意により』『陛下と相談の上』など、レイがマスコミに向けて出す声明が、全て偽りだったことを知る。

レイはメイソン邸で……『あなたを選んだのは陛下ではなく、この私だ』と言った。その言葉の意味が、ティナにもようやく理解できた。

シン国王は、自ら妃を選べるような段階ではないのだ。国王の母チカコは『愛する女性がいる』と言ったが、あれは嘘だろう。もちろん、世継ぎなど見込めるはずがない。    


(どうして今さら王妃が必要なの?)


ティナにはそれが不思議でならない。


「レイ。あの、何と言ったらいいのか……。陛下に、ご挨拶するべきかしら?」

「いや、もういいだろう。出よう――兄上、失礼いたします」


レイはそう言って兄に声を掛けると、右手を左の胸に当てる。

ティナも軽く膝を折り、小さな声で「失礼いたします」と口にした。

わずか数分、ティナは国王陛下との謁見を終え、ふたりは広く荘厳な病室を後にした。


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