アジアン・プリンス
(22)国王の真実
ふたりは竹林のあった裏庭ではなく、海岸に下りた。

そこには、王室のみが持てるというプライベートビーチがある。整然と管理され、真っ白な砂浜が見渡す限り広がっていた。

誰の足跡もない、太陽の降り注ぐ砂の上を、レイは海に向かって歩いて行く。

ティナも後に続いた。それは、まるで新雪に足を下ろす気分で、もったいなくもあり嬉しかった。


だが、レイの瞳はさきほどから翳ったままだ。そのせいか海の色まで悲しそうに見える。


「これから話すことは、国家機密だ。いいかな?」

「は……い」

「兄上はテロにより重傷を負われた。それは周知の事実だ。問題はその4年後――」


レイは極めて重い口調で語り始めた。


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