叶わない恋。
『さっきの頭に手を置いたのは教師として。
でも今抱きしめてるのは男として。
どういう意味か分かるか??』
あたしは桐ちゃんの腕の中で首を振った。
理解、できない。
理解なんてできるワケがない。
『夏希は鈍いのか??
ま、いいや。
気にすんなよ。』
桐ちゃんはクスッと笑う。
気にすんな、なんて無理だって…。
気になって、気になって仕方ない。
『前さ、仁が言ってたんだよ。』
あたしを抱きしめたまま桐ちゃんが話し始めた。
『夏希は親の愛を知らないんだ、って。
だから大人になろうとしてるんだ、って。
仁、悲しそうな顔しながら俺に話してくれた。
夏希?
もう、頑張るのやめたら??
俺は夏希の頑張ってる姿、もう見たくない。』
さっきよりも強い力で抱きしめられる。
「あたしは頑張ってなんかない。
これがあたしなんだよ。」
こんなときにまで強がるあたし。
素直になることをあたしはまだ、知らない。