叶わない恋。
「気づいたらさ、泣けなくなってた。
哀しくても、辛くても、苦しくても、涙が出てこなくなってた。
みんなが感動して号泣するドラマを見ても泣けなかった。
ホント、笑えるよね。」
あたしはアハハと乾いた笑いを漏らす。
でも本当は笑えなかった。
もう涙が零れそうで、
目の前がぼやけてきた。
『………笑えねぇよ。』
あたしの耳元で桐ちゃんが囁く。
『全然、笑えない。
なんでそんなになるまで我慢したんだよ。
どうして泣かなかったんだよ。
なんで俺を頼ってくれなかったんだよ…。』
少し震えた桐ちゃんの声が耳から入ってくる。
「だって、だって、桐ちゃんには…」
”弱い自分を見せたくなかったから”と、言おうと思った。
けど、その前に言葉が出なくなってしまった。
久しぶりにこの感覚を味わうことになったから。
頬に生暖かい雫がつたうのを感じたんだ。
あたしは今、泣いている。
『俺がどうした??』
桐ちゃんはまだ、あたしが泣いていることに気が付いていないようだ。