叶わない恋。
「バカっ………。
桐ちゃんのバカ野郎…。」
あたしは桐ちゃんの胸を叩いた。
なんで?
どうしてそんなこと言うの?
”命にも代えられない大切な人だ”なんて。
『全然痛くねぇーよ。
いつものあの怪力はどうした??』
桐ちゃんはそう言ってもっと力強くあたしを抱きしめる。
そんなに力強く抱きしめたら、もう叩くことだってできないじゃんか…。
『大丈夫だから。
今日のことは俺と夏希の秘密。
誰にも言わないよ、夏希の涙のことは。』
あたしの頭の上に桐ちゃんの顎が乗る。
もう目から流れる涙は止まらなかった。
こんなにも泣いたのはいつ以来だろうか…。
桐ちゃんのせいであたしの長年積み上げた努力は崩れてしまった。
責任、取ってよ。
『夏希、もう我慢しないで?
辛かったこと、苦しかったこと、全部俺に教えて?
もう何も、俺に隠さないで。』
頭の上から桐ちゃんの優しい声が聞こえた。
ねぇ、神様?
もう全部、さらけ出してもいいかな?
桐ちゃんになら、全部話してもいいかな?
ずっと、ずっと、あたしが隠してきたこと、
全部、話してもいいかな??