叶わない恋。
「ホントは誰かに気づいてほしかった。
誰かに、大丈夫?って聞いてもらいたかった。
でも誰も、あたしのこと気づいてくれなくて…。
夏希は強いもんね。
って言うんだよ。
本当は強くない。
自分のことは自分が1番よく分かってる。
あたしは必死で強くなろうとしてた。
大人になろうとしてた。
我慢することが、
強いのが、
大人だと思った。
だから我慢して強くなれば大人になれると思った。
でもさ、違うんだよね。
大人って気づいたらなってるもんなんだよね。
無理してなろうとするもんじゃないんだよね。
分かってたんだよ。
でもどうしても大人になりたかった。
理由なんて忘れちゃったけど、大人になれば何かが変わると思った。
でも、もう疲れたよ…。」
時折言葉が涙でつまる。
人の前で泣くのも、
涙で言葉がつまるのも、
久しぶりだった。
こんな風に誰かにキツく、抱きしめられるのも
久しぶりだった。
人肌恋しい時期なんて十の昔に過ぎたけれど、
桐ちゃんの体温が心地よかった。