叶わない恋。
『夏希はよく頑張ったと思う。
お前は誰よりも強かったし、大人だった。
でも違うんだよな。
それは夏希からの不器用なSOSだったんだよな?
ごめん、気づいてやれなくて…。
ごめん、こんなにボロボロになるまで頑張らせて…。
ホントにごめん。』
桐ちゃんの腕が緩くなった。
そしてあたしから離れる。
『俺、お前のこと好き。』
桐ちゃんはあたしの目を見つめた。
【ドキ ドキ ドキ】
胸の高鳴りが早まる。
桐ちゃんに聞こえているんじゃないかと思うくらい大きな音をたてている。
「あたしも、桐ちゃんが好き。」
素直になることを知らなかったあたしは、
ここに来てやっと、大切なことを知った。
素直になることはすごく大切なんだ。
そして、すごく簡単なことだった。
『ま、俺は知ってたけどな。』
桐ちゃんはそう言って余裕そうに笑った。
絶対、ウソだ。
鈍感な桐ちゃんが気づくワケない。
「あたしにウソをつくとは100年早い。」
さっき桐ちゃんに言われた言葉をそっくりそのまま返した。
結局あたしたちは、似た者同士、
ってことなのかもしれない。