叶わない恋。
ねぇ、桐ちゃん。
覚えてる?
あたしと初めて逢った日のこと。
あたしはあの日に交わした会話、全部覚えてる。
――『お前が海道夏希か!!
よろしくなっ!』
ニカッと笑って手を差し出した桐ちゃん。
なんだ、この教師。
桐ちゃんの第1印象はこれだった。
教師のクセに生徒みたいに無邪気な笑顔で笑ってた桐ちゃん。
正直、うらやましかった。
あんな笑顔で笑える桐ちゃんがうらやましかった。
あたしにはできない、笑顔だった。
――『お前、ホントにソフトボール向きの体してんな!!』
桐ちゃんはそう言ってあたしの肩をバシバシと叩いた。
なんでこんなに慣れ慣れしいの?
次に思ったことはこれ。
ホントに生徒と何も変わらない。
いや、生徒よりも精神年齢は低かったかもしれない。
子供のまま体だけが成長した大人。
桐ちゃんはまさにこれだ。
――「よろしくお願いします。」
一応、笑顔を向けたあたし。
最初の印象は大事だと誰かに聞いたから。