叶わない恋。





桐ちゃんは時折俯きながらもあたしに話してくれた。



あたしは不謹慎かもしれないけど、嬉しかった。

桐ちゃんの秘密な話が聞けて。


でも、胸が痛かったのも事実。

桐ちゃんが彼女のこと、どれだけ好きか分かってしまったから。


目を潤ませる桐ちゃんは恋する中学生の男の子みたいだった。


まだ彼女のことが好きなんだ、って目が言っていた。


それに結婚も考えていた、
なんて聞かされたあたしは胸を誰かにぎゅっと掴まれたような痛みを感じた。



ねぇ、桐ちゃん?


ずっと傍にいてくれる?


強がりで


素直じゃなくて


意地っ張りで


偉そうで



そんなあたしの傍にずっといてくれる??


長所なんてまったくなくて


短気で


ソフトボールくらいしか取り柄がなくて



まだ幼いあたしの横で笑っていてくれる?



桐ちゃん。


大人なんてみんなウソつきだと思ってたんだ。


でもあなたに逢えて違うということが分かった。


ウソつきじゃない大人がいることを知った。


あたしたちの味方でいてくれる大人がいることを知った。


桐ちゃん。


頑張ってね。


あたしは少しだけ、遠くに行ってしまうけど、


桐ちゃんの傍では応援してあげられないけど、


ずっと



ずっと



桐ちゃんのこと








応援してるから。






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