櫻の贄
沢山泣き喚いたからだろう。翌朝、彼女の目はひどく腫れあがっていた。

その目はまるで全てに絶望したかのよう。俺を見ようともせず、ただ天井だけを見ていた。


「この里では、婚姻関係を結ぶ時必ずこうしなければならないのだ」


つまりは、昨晩にした行為によって俺は彼女と夫婦になったと言う訳だ。

全てを説明しても、彼女はピクリとも動かず何もしゃべらず。

表情すらも変えなかった。まるで死んでしまったかのようだったが、彼女はまだ生きている。


「……飯にしようか」


部屋の外で待機していた従者の花鳥(はなとり)と風月(ふうげつ)に朝飯を二人前持って来させ、

初めての食事をとる事にしたが、起き上がっただけで彼女は手をつけようともしない。
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