英国喜劇リトレイス


『助けて…!』

何だ?
遠くから響く声に顔を上げると、俺は城の廊下に立っていた。

『ディ…ゼ、ル様…!』

また聞こえた。
今にも消えてしまいそうな、遠く小さい女の声。
すごく愛おしくて、優しい声が、切羽詰って俺を呼んでいる。

この声、どこかで──?


『ディゼル様!! 助けて!』

「!!」

俺はハッとして走り出した。



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