「金剛戦士Ⅰ」黎明の夢
バークレーの大学生時代に、よく遊びに行ったサンフランシスコが気に入り、街なかからやや離れた所のモーテルを買った。その後ロスアンゼルスの近くのモーテルも買い事業を少しずつ拡大してゆく。

ところが、ある日、ロスアンゼルスの近くに買ったモーテルで発砲事件があり、それに嫌気がさしてモーテルを売り払い、ニューヨークへ出て貿易会社を興した。

李の父親は、ナショナリズムの強い人であり、以前からアメリカで暮らす李とは性格が合わなかったのだが、その頃から親子で衝突するようになり、しばらくして父親からの資金援助を絶たれた。

李は仕方なく銀行から借り入れをしながら経営を続けて、少しずつ会社を大きくしてゆき、サンフランシスコや東京、大阪、上海、ソウル、北京、台北と次々に支店を開設し、事業を拡大してしていった。

その手腕をソウル大学時代の友人であった韓国の鄭外務大臣に見込まれアメリカ大使となり、やがて地球連合の韓国全権となった。

全権となった後、難問を解決へと導く努力や、穏やかな性格と紳士的な態度から世界中の信頼を集め、前回の投票で地球連合の事務総長となったのである。

その数年前に、李の父親は李の成功を見ることなく他界してしまい、李は、もうソウルへは帰らない決心をしたのである。

李には二人の娘があり、長女の名はジョアンと言い、現在は考古学専門の日本人公務員と結婚して大阪で住んでいる。次女の名はディアンと言い、ダラスの大学に通っていて現在三回生である。

今までの事を思い出しながら歩いていると、両親に両手をつないでもらいニコニコと微笑みながら、右のお母さんらしき方を向いては何かを喋り、そうかと思うと左を向いては、お父さんらしき人と何かを喋っている七、八歳の女の子が目に入ってきた。
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