佳き日に
[1]
黒いパーカーを目深に被り、琥珀は車に乗り込む。
運転席には雪が座る。
ピン、と張り詰めた空気が車内に広がる。
これから敵である鉛丹と桔梗と対峙するというのに、琥珀の頭には何故かエナカのことが浮かんでいた。
四日前、車に轢かれそうになった後からエナカがどうなったのか琥珀は知らない。
寧ろ何故今まで気にならなかったのか不思議なくらいだ。
「雪、あのさ。」
「なんだ?」
「エナカは、どうなったの?」
「・・・エナカ?」
「ほら、わたと一緒に車に轢かれそうになった人。」
雪と閏に対して琥珀が敬語を外したのは昨日からだ。
親交が深くなったとかではなく、ただ単に琥珀が敬語を使うのが苦手だから、という理由だ。
「事故のときの傷は少しあったらしいが、もう退院して無事らしいぞ。」
「そっか。」
エナカが無事だったので一安心だ。