佳き日に



しょうがないか、と琥珀が思いなにか別のことをしようとすると、珍しく雪が話を続けてきた。

「この小説の中に、作者の造語で、キップルという言葉があるんだ。」

「キップル?」

語感が可愛いね、ぐらいにしか琥珀は思わなかった。

「ダイレクト・メールとか、からっぽのマッチ箱とか、ガムの包み紙とか、きのうの新聞とか、そういう役に立たないもの、らしい。」

「短的に言うと、ゴミ?」

「まぁ、そうだろうな。」

「で?」

琥珀はぱかっとメープルクッキーの缶を開けながら雪に問いた。

閏が買って来てくれたクッキーは、ハチミツのいい匂いがする。
バターの匂いも少し混ざっていて、いかにも、お菓子の中のお菓子、という感じだ。

「………似ているな、と思って。」

「何に?クッキー?欲しいの?」

クッキーに気を取られて琥珀はまともに雪の話を聞いていなかった。

「いらない。そうじゃなくて、」

「何?」

「メモリーズに、似ていると思ったんだ。」

サクッ、と。
軽快な音をたてて琥珀はクッキーに齧り付いた。
予想していた通りの、バターが効いた味。


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