佳き日に



『四月四日。
遥の予想は当たっていた。
茜、赤い女はメモリーズの誰かを捜していたのだ。
もっと言うと、茜は俺を捜している。
彼女は勘違いしている。
メモリーズに家族を殺され自分の記憶も盗まれたと思っている。
記憶を盗んだのは確かだから弁明のしようがないが、家族の死についてはどう説明すればよいのだろう。』


『四月十一日。
雪がおねしょした布団を干しながらずっと考えていた。
これから茜は赤い女として俺を見つけるまでメモリーズを殺し続けていくだろう。
いつか、遥や雪にも危険が及ぶかもしれない。
しかし、仮に俺が茜に殺されたとしたら、茜は全てを思い出す。
死ぬ前日の家族に、自分がどんなことを言ったのか、思い出してしまう。
また自殺しようとするかもしれない。
そうだ、俺は彼女が自殺しようとしているのを見て、なんとか止めて欲しくて彼女の記憶を奪ったのだ。
結局俺は、どうすればよいのだろう。』



『四月十五日。
雪はグリンピースが嫌いらしく、チャーハンを食べさせたらご丁寧にグリンピースだけ避けて食べる。
一歳なのに器用だな、と思った。
この十二年間悲しくなるから茜のことはあまり思い出さないようにしていたが、考えてみれば色々な感情が蘇ってくる。
十二年経ってようやく気づいたのだが、俺は茜のことが好きだったのだろう。
幸せになってほしくてした行動は全て逆効果だったようだが。』





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