佳き日に


[7]


食後に閏が切り分けて持ってきたロールケーキにいち早く反応したのは琥珀だった。

「閏作ったの?」

「まさか。買ってきたんですよ。」

琥珀の言葉に確かに閏はロールケーキも作れそうだな、と琴は思った。

ここ数日で閏は料理の腕をグンと上げた。
料理の本を買ってきて、どうすれば美味しくなるのかネットで調べて。

閏が何か作る度味見していた琴はその上達具合に毎回驚いていた。
ただ、その分少し勿体無いと思った。

「味覚、取り戻せねーの?」

ジュウジュウと音をたてハンバーグを焼いていた閏に一度そう聞いてみた。

どうすれば味覚が戻るかなんて分からなかったが、今は視力も手術すれば戻せるのだ。
きっと、味覚も、そう思って琴は言ったが閏は少し考えるだけだった。

「別に、いいです。」

「なんでだし。味覚あった方が作るの楽しいし、きっと。」

「今も十分楽しいですよ。」

パッと、きれいにハンバーグを閏は裏返す。

「反応してくれる人がいますから。」

閏の口に微笑みが浮かんでいた。

琥珀のことか、と琴は思った。
確かにあいつは美味しそうに食べるよな。


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