佳き日に


そんな会話をした何日か前のことを思い出しながら琴は琥珀の方を見やる。
人数分のフォークをせっせと用意していた。

「バタークリームのロールケーキらしいです。」

「そうなんだ。私バタークリーム好きだよ。」

「バタークリームって何だし。」

聞いたことのない言葉に琴は首を傾げる。

「生クリームよりもふわふわしてなくて、まったりしてるの。」

琥珀はそう言ったが、あまりよく分からなかった。

そもそも琴は生クリーム自体食べたことがない。

雪は相変わらず会話には混ざらず本を読んでいる。

配られたロールケーキを琴は早速一口食べてみる。
確かに、まったりしていた。

唐突にパチン、と琥珀がテレビを点ける。

『俺は、お前と一緒にいたいんだ。』

『でもあたし、貧乏だし。あなたには婚約者がいるじゃない。』

『あんなの政略結婚だ。俺は愛した人と結婚したい。』

どうやら純愛もののドラマらしい。
しかも、一番盛り上がるシーン。
周囲の反対を押し切って結婚するのを決めたのだろう。

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