佳き日に
「はぎっていうんだ。じゃあさ、漢字はこれ?」
琥珀はマジックを貸してもらいスケッチブックに『萩』と書く。
少女はコクリと頷いた。
そのときふと萩の足が目についた。
小さな、子どもの素足に、パックリとした切り傷がたくさんできている。
そこから流れ出る血に琥珀は眩暈がした。
「もしかして、裸足で走ってた?」
萩は一つ頷く。
黒髪のおかっぱに、顔の下半分を覆う大きなマスク。
そこで琥珀は萩の大きなクリクリとした目が茶色いことに気付く。
まるで、雪や閏や琴のように。
『あなたは、ねらわれてる。』
キュ、キュ、とマジックの音を出しながら萩はそう書く。
「すぐここから移動した方がいい?」
『まだうごかないほうがいい。そげきしたひとは、あなたがここからでてくるのを、まってるかも。』
「そっか。」
平仮名だけの萩の言葉はけっこう読みづらかったが、琥珀は彼女が私を助けてくれたんだ、と暖かい気持ちになった。