佳き日に
[2]
アップルパイがあったかい。
油っぽいな、コレ。鉛丹は指を舐めながらそう思った。
袋から出さずに食べているはずなのに、油が染み出てくる。
手がベタベタする。
こんなことなら無難にポテトにしときゃよかった。
現に桔梗はLサイズのポテトを買っている。
いいな、と思い桔梗の方を恨めしそうに見る。
だが、不思議なことに桔梗のポテトは全く減っていなかった。
自分からこの店に来たいと言っておいて、食べないってのはどーいうことだ。
鉛丹は不満に思って桔梗に文句を言おうとした。
が、言うより先に桔梗が鉛丹の方を振り向いた。
「兄さん。あれ、おもしろいものが。」
そう言って窓の外を指さす桔梗。
心なしか声が興奮している。
「は?何言ってんだお前。」
「あれ、見てください。」
桔梗が指さした方を見てみる。
しかし、騒々しく車が行き交う光景が見えるだけだ。
「あの、交差点に立っている人ですよ。」
「交差点ってここからかなり距離あんだろ。見えねーよ。」
鉛丹は文句を言いながらも目を細める。
秋の風か、新聞紙やらゴミやらを飛ばしている。
待ち時間がチカチカを表示される信号機が見える。
車の騒々しさが、ふとした一瞬の間だけ消えた。
その時、桔梗が言っていたものの姿が、はっきりと見えた。
「あ。」