佳き日に
「……お前、右腕深く切られてるな。」
「うん。始めからあっちも殺す気満々でこられてさ。」
防護服を着た警官が家へ入って行く。
カチッと音がして横を見れば、せんべいが煙草に火を点けていた。
突然、ふいに思い出したかのようにせんべいが話し始めた。
「お前さぁ、どっか田舎行けよ。」
白く濁った煙の匂いにエナカは顔を顰める。
「何?急に。」
「だからさ、メモリーズがいないような田舎行って、気の良い男でもつかまえて、死ぬまでのんびり暮らせって。」
せんべいが何を言わんとしているのか。
エナカは気付くと同時にせんべいに背を向ける。
「俺が言いたいのは、あの男の気持ちも汲んでやれってことだ。」
後ろからせんべいの声がする。
違うって、そうじゃない。
エナカは心の中で反論する。
本当に言いたいことは、なかなか言葉にできない。