佳き日に
「でもさ、赤い女がそんな様子ならなんで琴はその時赤い女を殺しちゃわなかったの?」
琴がメモリーズだって気づいてないならこれ以上ない程の好機だろうに。
赤い女はメモリーズ最大の敵だし、その時琴が殺してくれればよかったのに、と菘は思った。
「それが、琴は赤い女から記憶を奪えなかったらしいんだよ。」
「へー、コンタクトでもしてたのかな。」
メモリーズは相手の目を見ることで記憶を奪う。
だが、それが不可能な場合もある。
目と目の間に障害物がある場合だ。
例えば、メガネやコンタクトレンズなど。
菘も記憶を盗もうとしたら相手がコンタクトを付けていたらしく何秒目を見つめても記憶が盗めなくてイライラした覚えがある。
「目が悪くてコンタクトをしてるんだったら何も問題はないけど、メモリーズ対策としてコンタクトしているんだったら問題大有りだからね。琴がメモリーズと分かってもわざと気づかない振りをしていたのかもしれない。もしそうだとしたら、赤い女の後継人の柳琥珀って奴はなかなか厄介だよ。」
椿の話を聞きながら菘は今の手持ちのお金を計算していた。
護身用に銃をもう一丁買うくらいの余裕はありそうだ。
自分の身は自分で守るしかない。
誰かが守ってくれるなんて、そんな甘い考えじゃ生きていけない。
菘は今までの人生で十分すぎる程にそのことを学んでいた。