佳き日に
あんな赤いドレス着ていたのだから、どこからどう見ても赤い女だっただろうに。
鉛丹はそんな桔梗の様子などおかまいなしに矢継ぎ早に話を進める。
「俺も初めは赤い女かと思ったよ。いや、本人じゃなくて後継人っていう意味でな。だけどなにか引っかかるんだ。勘でしかないけど、あの柳琥珀って女は、人を殺せない。筋肉のつきかたから見ても俺らメモリーズと対等にやり合えるとは思えない。何よりも、雰囲気が違う。俺らみたいに怪しい奴らと関わっているような空気もないし、人を殺したこともなさそうだしな。」
つまりあの女はただの囮じゃないのか。
それが鉛丹の導き出した答えだった。
始めはポカンと鉛丹の話を聞いていた桔梗も、ようやく話が飲み込めてきた。
だが、そこで一つの疑問が浮かび上がった。
「仮に、囮だとしても、誰が何のためにそんなことを・・・」
「さぁな。警察とかじゃねぇか。あいつら、メモリーズを一人でも多く見つけて殺したがるからな。大方、俺らメモリーズの業界をかき回したかったんじゃないか?」
じゃあ、あの柳琥珀とかいう女そのものは危険ではないのか。
ただの囮。
僕らが戦うべきなのは、柳琥珀ではなく彼女を囮として使った警察か。
はたまた、本物の赤い女か。
桔梗はそこまで考えてゾッとした。
21年前にメモリーズを無差別に殺していった赤い女。
彼女はまだこの世に生きていて、今もメモリーズを狙っている。
僕と兄さんは彼女から狙われているのだろうか。
いや、赤い女はこの世界のあらゆる場所にいるメモリーズを狙っているはずだ。
「ただの囮だとしたら、柳琥珀からはあまりいい情報は聞き出せなさそうですね。」
「でも、何か尻尾は掴めるかもしれないぞ。」
希望に満ちた声で鉛丹はそう言う。
そのまっすぐに見つめてくる瞳に桔梗は少し圧倒された。
「危険を犯してまでも行く意味はないでしょう。」
「あるだろ!赤い女の情報が手に入るんだぞ。あと柳琥珀は囮だから危険じゃないってさっき話したろ。」
「赤い女が近くにいたら危ないですよ。」
「50近くのババアにやられる程俺らは弱くねぇ。」
自信満々にそう言う鉛丹。
鉛丹は一度決めたら絶対に引かない。
桔梗は諦めて鉛丹に従うことにした。