佳き日に





10時。御学高校正面玄関。





「堂々としてりゃ意外と何も言われないもんだな。」

「そうですね。」

心配してた僕が馬鹿みたいです、と桔梗は喉元まで出かかった言葉を飲み込んだ。

アスファルトの黒い道。
ふいと上を向けば白い建物。
所々ペンキが禿げてしまっている。
塗り直せばけっこう綺麗になるはずなのにな、と桔梗は思った。

「けっこうボロいよな、ここ。」

鉛丹は相変わらず思ったことをズバズバ言ってくる。

「せめて趣があるって言いましょうよ。」

学校の方々にそんなこと聞かれたら嫌な顔されますよ、と鉛丹を嗜める。
でも、桔梗も内心では全く同じことを思っていた。
柳琥珀が通っているという高校はかなり古い。

さすがにお化け屋敷のような旧校舎は使っていないようだが、新校舎もお世辞にも新しいとは言えない。
さっき聞こえてきたチャイムも音がはずれていてなんだか間抜けだった。

「柳琥珀は1年でいいんだよな?」

「椿さんの情報によれば6組です。」

「今は何の時間だ?」

「体育ですから外で何か運動しているんじゃないですか。」

学校に行ったことのない桔梗と鉛丹は授業というものがどのように行われているのかは詳しくは知らなかったが、学園もののドラマや映画は見たことがあったので大方の予想はついた。

「校庭に行きますか?」

「いや、教室に行こうぜ。」

「行っても誰もいないはずですよ。」

「好都合じゃねぇか。」

鉛丹はそう言うとドンドン校舎の方へ歩いて行く。
いつになく機嫌が良さそうだ。
桔梗は鉛丹が言った好都合とはどういう意味なのか、一人で首を傾げた。
そうしている間にも鉛丹は鼻歌を歌いながら先へ行ってしまう。
慌てて後を追う。

校庭を横切った時、生徒の賑やかな声が耳に入ってきた。
その声を聞きながら自分には縁のなかった世界だな、と桔梗は思った。



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