佳き日に




「だから、お前にこれを渡そうと思ったんだ。」

「ごめん。話の流れが全く理解できない。」

せんべいがエナカの目の前で瓶をユラユラと揺らす。


「いいか?人間ってのはずる賢い。平気で騙し、殺しあう。同じ地球に住む生き物たちは人間のとばっちりを受けてばかりだ。」

エナカは未だせんべいの言いたいことが分からない。
彼はいつから自然愛に目覚めたのだろう、と考えているしかない。


「生きていてほしいと思える奴がいたら、これを飲ませろ。二滴で十分だ。」

そう言って瓶を机上に置くとせんべいは立ち上がる。

何が何だか分からないまま彼の話は終わってしまった。
帰ろうとするせんべいの背中に、エナカは慌てて声をかけた。


「こっ、これは動物に飲ませればいいわけ!?」

せんべいは振り返らなかった。
だが、その背中が微かに震えたのが分かった。


「馬鹿か。メモリーズにだよ。」

ハハハ、と今まで一回も聞いたことがないくらいせんべいは軽快に笑い、去っていった。

エナカは瓶を持ち上げ中の液体をマジマジと見つめる。

生きていてほしいと思えるメモリーズにこれを飲ませる。


つまり、これを飲んだメモリーズは生き残る。
じゃあ、飲まなかったら?


脇が、首が、スーッと冷えていく気がした。

今、エナカの知らないところで何が起きているのだろう。



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