佳き日に


[2]


ニコニコとあどけなく笑う鉛丹と、それにつられて笑っている柳琥珀。

その光景を間近で見ていた桔梗が思うことは一つ。

兄さんってホント、猫かぶるの上手いですよね。


「じゃあ、俺がなんとかしてその柳琥珀って女に気に入られるから。」

30分程前にそう言われた時は少々面食らった。
鉛丹が考える作戦が大雑把かつ適当なのはいつものことだが、今回は大雑把すぎる。
いくら兄さんが直感型だといってももう少し考えるべきだ。
てかなんとかしてって、どうするんですか、具体的に。
あまりの無計画さにしかめっ面な桔梗を意にも介さないように鉛丹は口笛を吹く。

「なんとかって言ったら、なんとかするんだよ。」

馬鹿ですか。
呆れて物も言えない桔梗を見て、鉛丹は胸を張ってさらにこう言い放つ。

「まぁ見とけって!俺がやれば大丈夫だからな!」

ドヤ顔。
その自信はどこから来るんですか、と桔梗はつっこみたかったが、話が長引く気がしたのでやめた。
もう兄さんの好きにさせようーー・・・、そう思った。

結果的に、その決断は正しかった訳だ。
不本意だ。
すごく納得がいかない。
だが、世の中なんてそんなものなのだろう。

現に今、柳琥珀は鉛丹のことを可愛い可愛いという感じに見つめている。
彼女からしたら僕たちは弟のようなキャラに位置づけられたのだろう。
メロメロだ、まさに骨抜き状態。
そんな琥珀の様子に、直感型人間恐るべしですね、と桔梗は思った。

「お礼!お礼、何がいい!?」

その琥珀の言葉に、桔梗は少し苦笑いをする。
まさかここまで上手くいくとは。
順調すぎて逆に怖い。



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