佳き日に



鉛丹が何かモゴモゴ言って桔梗の方に目を向けた。

合図だ。
ここからは僕の仕事ですね。
桔梗はあらかじめ用意していた台詞を頭の中で反復する。

「なん、でも、いいんですか?」

いかにも人見知りの少年のように振る舞えば、柳琥珀の目がパァァっと明るくなる。
なるほど確かに、頼りない存在というのは女性の母性本能をくすぐるようだ。
柳琥珀にここまで気に入られるとは。
鉛丹と目を合わせ、小さく笑いあう。

そこで桔梗はあることに気づく。
メモリーズ以外で、一般の女性とここまで長く会話したことはなかった。
今まで仕事で女性と話したことは確かにあったが、皆腹に一物抱えているような人達だった。
そのような人達でなければ危険な仕事は出来ないものなのだ。

だから、素直にキラキラとした目を向けてくる琥珀の反応は新鮮だった。

そして、ここまで直接的な好意を向けられたのは初めてで、桔梗自身は気づかなかったが、少なからず戸惑っていた。


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