佳き日に
[5]
ふわっと、閏の前を琴が通った瞬間、コーヒーの匂いが鼻を掠める。
白いマグカップを持ち飲みながら歩く琴を行儀悪いなぁ、と閏は呆れた目で見る。
そのすぐ側で琥珀は雨の日記を読みながらコーヒーを飲んでいる。
だが、その手は一向にページを捲っていない。
目も文字を追っている気配はない。
また何か変なことを考えているのか、と思いながら閏は声をかける。
「琥珀さん、何か隠してませんか?」
ぶっ、と。
琥珀が飲んでいたコーヒーを少し噴き出す。
分かりやすい。
テンプレすぎていっそ清々しいですね、と閏は思う。
慌てて口元を拭きながら琥珀は閏の方を向く。
その目はバタフライ並みに泳いでいる。
「え、え!?何いきなりどうしたの!?」
「やっぱり隠してるんですね。」
「ない!隠し事なんてないってば!」
手をバタバタと忙しなく動かす琥珀が何かを隠しているのは明白だ。
どうやって聞き出そうか。
コーヒーの芳ばしい香りを嗅ぎながら閏は考える。