佳き日に
[1]
「じゃあ、僕たちまだ朝ご飯食べてないので、何か食べたいです。」
「それでいい!?」
「もちろん!」
そんな会話をしたのがつい30分程前のこと。
それから教室から鞄を持ってきた。
学校を抜け出すことに琥珀の良心は少し痛んだが、それだけだった。
元々琥珀はあまり真面目な方ではないのだ。
学校にも、勉強のためではなく友達と話すために行っているようなものだ。
ご飯を食べられるような所といったら近くのファミリーレストランしかなかったのでそこへ行くこととする。
店内に入った時、学生であるはずの年齢の琥珀達三人を見て店員は何か言いたげだったが、結局何も言ってこなかった。
「ところでさ、お姉さん名前なんていうの?」
席についた途端にやんちゃそうな子がそう言ってきた。
そういえばまだお互いの名前も知らなかったのだ。
そんな相手に食事を奢ろうとしているこの状況がなんだか不思議だと琥珀は感じた。
「琥珀だよ。柳琥珀。君達は?」
「俺が泉でこいつが春。」
「重力ピエロ?」
失礼だとは思ったが琥珀は吹き出してしまった。
好きな小説にでてくる兄弟と名前が完全に一致している。
最近はそうホイホイと本名を知らない人に言ってはいけないと教えられているのだろう。
そんな琥珀の様子を見て春と言われた真面目そうな子が苦笑いした。
「琥珀さん、残念ながらこれが本名なんです。」
「なんで残念なんだよ。」
「僕たちの名前を言う度に皆が色々言ってくるので。」
偽名だと思っていたがまさか本名だったとは。
琥珀は少し驚いてから水を飲んでいる2人にまた話しかける。
「2人は双子?」
そう言った途端、同時にしかめっ面された。
パントマイムを見ているようだった。