佳き日に
柳琥珀は慣れているのか手際よく注文をしていく。
すべての動作が速い。
コレが世に言うファストフードなのか、と鉛丹は一人考える。
それから、あの日駅前で赤い女の格好をしていた理由をどうやって聞き出そうか考える。
なかなかいい案が浮かんでこない。
「あの・・・。」
店員がいなくなったのを見計らってか、桔梗がおずおずと柳琥珀に話しかけていた。
「ん?なに?」
「琥珀さんが頼んでいたドリアってなんですか?」
ドリア?
鉛丹の頭にも?マークが浮かぶ。
確かに柳琥珀は桔梗と鉛丹の分のグラタンの他にもそんなものを頼んでいたような気がする。
どんな料理なのか皆目見当もつかないが。
「んーと、お米のグラタンみたいなやつ。」
「じゃあ僕ら三人ともグラタンを頼んだことになりますね。」
「そうだねー。」
桔梗と琥珀が顔を見合わせて笑い合った。
この二人の空気はほんわかしているので鉛丹は居心地が悪くなる。
桔梗はよくあのほんわかキャラを保っていられるな。
感心しながら鉛丹はズボンの右ポケットから用意していたものを取り出し机の下にある琥珀の鞄の中に忍ばせた。
桔梗との会話で四中ニコニコしている琥珀が気づくはずもない。
桔梗に軽く目配せし、琥珀の名前を呼ぶ。
ん、なに?と振り返った琥珀に、鉛丹は無邪気な笑顔を作る。
「喉渇いたから水もらってくる!!」
「あ、そっか。水欲しいよね。私も行こうか?」
ごめんごめん忘れてた、と腰を浮かしかけた琥珀を遮るように桔梗が立ち上がる。
「いや、僕と兄さんで琥珀さんの分も持ってきますよ。」
「え、いいよそんな。」
「奢ってもらうんだから、そのくらいさせてください。」
やんわりとそう言った桔梗を見て琥珀は「え、あ、そ、そう?ありがと。」とまごまご言っていた。
少し動揺しているのだろう。
琥珀に会いに行く前に、そのへんで買った女性雑誌を真剣に読んでいた桔梗が思い出される。