佳き日に
「お前の養子として、戸籍とか作ってやってくれないか。」
「まぁ、当てがないわけじゃないけど。」
一億の小切手をエナカは見る。
数百万あれば喜んで不当に戸籍を作ってくれる人はいるだろう。
もしいなかったとしても、情報屋に頼んでなんとかしてもらえばいい。
ただ、この小切手が偽物だった場合は話は別だ。
「疑り深いな。それは本物だ。」
エナカはゆっくりと視線を小切手から雪へ移す。
微かに微笑むその顔は、確かに雨の面影があった。
そんな雪とのやりとりを思い出しながら、エナカは小切手を見つめる。
ちかくでは白川が携帯をカチカチいじっている。
「白川。」
「はい?」
「あの子の戸籍作ってあげてよ。あんた政府にいたんだからツテくらいあるでしょ?」
面白いくらい白川の動きが止まった。
たっぷり三秒。
ゆっくりと、白川が声を絞り出す。