佳き日に
[2]
鉛丹と桔梗は椿との電話が終わって数十分経っても、現状を打開する術を見つけられないでいた。
今までだったら怖いもの知らずな子どもの無鉄砲さとメモリーズ特有の運動神経の良さで切り抜けていけた。
だが、今回はそんなもので敵うような相手ではないだろう。
赤い女。
その上、雪、閏、琴の三人だ。
先行きを案じる桔梗の眉間には知らず知らずのうちに皺がよっている。
重苦しい沈黙を破ったのは鉛丹だった。
「桔梗。椿から新しい情報だってよ。」
「はぁ。」
桔梗は何を考えているのか、生返事だった。
「梔子が福島に来てるらしいぞ。」
「梔子?」
ここでようやく桔梗が鉛丹の方を向いた。
だが、今の会話に脳内が追いついていないのか、何度も瞬きを繰り返している。
「あれだよ。気分屋の。」
「轢き屋?」
「そうそう。」
「なんで梔子が福島にいるんですか?」
「柳琥珀を殺すつもりだってよ。」
「へぇ。」
勇気ありますね、赤い女相手に。
心の中でそう呟いた桔梗。
この状況で安全な場所から動こうとしなかった自分たちを卑下する思いも心の片隅にあった。
ただ、なんとしても生き延びなければ、という思いが大きかっただけだ。