『短編』紙婚式
女性に笑顔を向けるその彼は、紛れもなく、亮だった。
そして。
隣りの女性は、彼と同じ部署で働く正社員の堤 梨花(つつみ りか)さんだった。
2人はわたしに気づくことなく雑踏の中を歩き、デパートの中へと消えていった。
わたしはただ首だけを動かして、2人の姿が見えなくなるまで凝視していた。
しばらく、思考が働かなかった。
わけがわからないまま、とりあえず足を前へ進めた。
あれは……どういうこと?
仕事なら、腕を組んでデパートへなんか、行かないよ…ね?
なんだか、美男美女で絵に描いたようなカップルだった。