『短編』紙婚式
その日の夕方。
買い物帰りのわたしは、駅に向かって歩いていた。
左手にはさっきお店で一目ぼれしたカットソー、右手には今晩の夕食の材料が入ったエコバッグ。
今日は少しだけ奮発して、いつもより上質のミンチを買った。
これでハンバーグ作ったらおいしいだろうな。
亮もきっと喜んでくれる。
思わず鼻歌まで歌ってしまうくらい軽い足取りで歩いていたのに、その光景を見て、わたしの体は一瞬にして凍りついてしまった。
わたしの瞳に映ったのは、すらりと長身のスーツ姿の男性と、いかにもキャリアウーマンといった女性。
その男女は、腕を組み、何かを話している。