女王様は上機嫌【GL】
それから、千鶴はまた読書をはじめてしまった。
カラーボックスの上に積まれている本は、全部ホラーらしい。
趣味わる‥‥。
しかもたまに無言でニヤリと笑うから、よっぽど面白いんだろう。
怖がりのわたしには信じられないけど。
「ああ、そうだ」
本に目を落としつつ、思い出したように千鶴が口を開く。
「あんた、家どこなんだよ」
「えーと‥‥あっち」
わたしは方角を指さしてみせる。
すると千鶴から冷めた視線が送られてきた。
「いかにも頭の悪い答え方だな」
「う‥‥っ」
確かに、今のは反論できない。
このアパートを出て、前の道を右に進む。
まっすぐ進んでふたつ目の十字路の角を、左に曲がる。
その、角から二軒目がわたしの家だ。
歩いて三分かからない。
「そんな簡単な説明がなんで口頭でできないんだよ」
携帯の地図を見ながら教えたら、やっぱりバカにされた。