愛は満ちる月のように
悠の両親には美月の事情や偽装結婚のいきさつを話してあった。

父は何も言わなかったが、母は『そんな形で結婚するのは間違っている』といって譲らなかった。

美月は自分のことが反対されている、と思ったようだが、そうではない。母は、悠の決断が間違っていると反対したのだ。


だが、悠にとって母は“父の妻”であり、もう“悠の母親”ではなかった。


悠は言い訳もせず、許可も取らず……。ただ、結婚することを両親に報告しただけに過ぎない。

そんな両親は、すでに大学生になっていた桜と、美月に恋心を抱いていた真には、悠の結婚の事実だけを伝えたらしい。


真は自分の気持ちに終止符を打つため、ボストンに住む“兄夫婦”のもとを訪ねた。


当時の悠は、東京とニューヨーク、ロンドンの間を行ったり来たりの仕事だった。


「真くんはすぐにわかってくれたわ。そして、ユウさんになら……『兄貴になら安心して任せられる。優しくて頼りになる男だから』って。納得してくれたの」

「……」


悠は何も答えられない。


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