愛は満ちる月のように
悠がトーンを落として耳もとでささやくと、途端に美月の頬が真っ赤に染まる。


「ユウさん! いったい、何を買ってくださったの?」


軽く笑いながらエスカレーターに向かおうとしたとき、美月の携帯が鳴った。


一瞬、美月の顔に警戒心が浮かんだが……。


「あら? 那智さんだわ」

「は?」


どうして那智が美月に電話をかけてくるのだろう?

悠が疑問を抱いたときには、すでに楽しそうに話し始めている。


「昨日は本当にお世話になりました。……ええ、まあ……」


何が“まあ”なのか不明だが、美月は少し照れた様子だ。


「え? 今から暁月城でお花見ですか? それは……」


美月が悠のほうを見たので、目を細め、首を左右に振った。

ところが、


「ユウさんはお花見には行かれないそうです。ええ、私だけご一緒させていただいてもよろしいですか?」


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