愛は満ちる月のように
会計を済ませ、喫茶店を出る。

さすがの美月も、自分が払うとは言い出さなかった。


喫茶店を出てすぐ、悠はサービスカウンターに向かう。彼の姿を見るなり、カウンターの女性がにっこり笑って、綺麗にラッピングされた商品を紙袋に入れて渡してくれた。

悠はそれを「ありがとう」と言って受け取る。


「何か特別なものを買われたのね。ピンクのリボンが見えたから、女性へのプレゼントかしら?」


振り返ったところに美月がいた。

口調は穏やかだが、目は笑っていない。そんな彼女の目の前に、悠は袋ごと差し出した。


「正解だよ。奥さんへのプレゼントだ」

「え?」


険を含んだまなざしが一気に和らぐ。


「まさか、プレゼントも受け取れないとは言わないだろう?」

「ええ、もちろんよ」


美月は少し恥ずかしそうに微笑み、「ありがとう、嬉しいわ」そう答えた。


「開けて見たいのだけど……」

「あ、いや……それは家のほうがいいかな。できれば今夜……寝室で着てみて欲しい」


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