愛は満ちる月のように

(6)恋の魔法

白い天井が見える。

美月は目を開けたとき、ぼんやりとした頭でそんなことを考えていた。


(何があったのかしら? 急にイライラして、そして悲しくなって……)


美月はアルコールにいい印象はなかった。両親とも乾杯程度にしか飲まず、身近に好んでお酒を飲む人がいなかったせいもある。

そして彼女が働くボストン・ガールズ・シェルターには、十代でありながらアルコール中毒の症状を見せる少女も少なくない。あるいは、両親や夫、恋人がアルコール中毒で暴力を振るわれたという女性も。

これでは、とても積極的に飲みたいとは思えないだろう。


そんな自分がアルコール……それも発泡酒を一缶飲んで、悠にやつ当たりをするなど、信じられない。


そのとき、冷たいものが美月の頬に当てられた。


「きゃ!」

「ああ、ごめん。アイス枕で冷やしたほうが、気分がいいかと思ったんだけど……驚かせたね」


< 156 / 356 >

この作品をシェア

pagetop